居場所ハウス(岩手県大船渡市)

「ハネウェル居場所ハウス」(以下、居場所ハウス)は、2011年3月11日の東日本大震災の被害をうけた地域の復興のため、そして高齢者の支援をするために生まれた場所です。
高齢者は、若い世代を支える存在としてではなく、「面倒をみてもらわないと生きていけない」災害弱者としばしばみなされます。こうした状況は、被災地だけに限ったことではありません。現代社会において、地域生活から切り離された高齢者は、異世代との交流の機会と、社会に貢献する役割を失いつつあります。このことは、若い世代にとっても高齢者がもつ大切な知恵や経験を継承できないという状況を生んでいます。
ワシントンDCの非営利団体「Ibasho」は震災1年後に被災地を訪れ、震災が起きた時の逃げ場や、生き延びる手段を若者たちに教えて、多くの命を救った高齢者のエピソードを多数耳にしました。また、被災者の方々からの「国内外から寄せられた多くの支援に心から感謝していると同時に、支援を受けるだけでは申し訳ないし辛く感じる。できればその恩義をお返ししていきたい。でも、どうしたら良いかわからない。」という声も耳にしました。
こうした経験をふまえ、「Ibasho」は長期的な視点からの復興を通じて、地域の高齢者を支援させていただきたいと考え、「居場所ハウス」のプロジェクトを提案しました。「居場所ハウス」は、震災を生き延びた高齢者を勇気づけ、地域の復興の過程で「頼りにされる存在」として地域の方々をつなげる役割を担って欲しいという願いから生まれました。


「Ibasho」が大切にする8つの理念

  • 高齢者が知恵と経験を活かすこと
  • あくまでも「ふつう」を実現すること
  • 地域の人たちがオーナーになること
  • 地域の文化や伝統の魅力を発見すること
  • 様々な経歴・能力をもつ人たちが力を発揮できること
  • あらゆる世代がつながりながら学び合うこと
  • ずっと続いていくこと
  • 完全を求めないこと

「居場所ハウス」は専門家が創り上げる場所ではありません。「Ibasho」は「地域の方々の目線から、地域の方々と一緒に、地域の方々のための場所を実現する」ことを大切にしながらプロジェクトを進めてきました。
そのために、高齢者を中心とする地域の方々と共に、「居場所ハウス」の計画、デザイン、運営のあり方を考えていくためワークショップを重ねました。ワークショップでは、これまでの高齢者介護と「Ibasho」のアプローチの違いを話しあったり、地域において担える役割を考えるため「私にはこれができる」ことを紹介してもらったり、デザインやメニューについて意見交換をしたりしました。
また、「居場所ハウス」は、古民家を修復するというアプローチを敢えて選択しました。その理由は2つあります。一つは「時を重ねたものが持つ味わいと美しさと大切にしたい」こと。これは高齢者が「頼りにされる存在」であって欲しいという願いとも一致します。もう一つは「被災後に建ち並ぶ仮の建物ではなく、地域の方々に地域の財産であるとプライドを持ってもらえる場所にしたい」ことです。
こうした経緯を経て、「居場所ハウス」は2013年6月に岩手県大船渡市末崎地区の仮設住宅近隣にオープンしました。オープン後の運営は、地域の高齢者を中心とする人々によって立ち上げられたNPO法人居場所創造プロジェクトが担います。

「居場所ハウス」は、建物を作っただけで終わるプロジェクトではありません。 高齢者を中心とする地域の人々が、地域における自分の役割を見つけ、互いに頼りにし合いながら、ゆるやかなつながりを築いていくこと。「居場所ハウス」が、本当の意味での地域の“居場所”として根付いていくことに希望を寄せるとともに、これから世界的に拡がる高齢社会における希望の光として、被災地から「人と人とのつながり」の大切さを発信していただけることを心から願っています。

東日本大震災から「居場所ハウス」オープンまでの経緯はこちら